今回読んだのは、遠田潤子さんの『銀花の蔵』。
☑第163回直木三十五賞候補作
『銀花の蔵』のあらすじ
売れない絵描きの父と盗難癖のある母。世間的には色々と問題はあるけれど、娘に優しい両親が大好きな銀花は幸せに暮らしていた。父方の祖父の死をきっかけに父が実家の醤油蔵を継ぐために帰るまでは。
家族を襲う様々な苦難と、蔵を継いできた一族の秘められた過去を知り、もがきながらも銀花は大人へと成長していく。
銀花の幼少期から祖母になるまでの波乱万丈の半生を描いた物語。
『銀花の蔵』の印象的な言葉
かわいそう。傲慢で身勝手で、だけど素敵な言葉だ。
私はみんなに言ってあげたい。かわいそう、と。そして寄り添ってあげたい。
人にかわいそうと言ってあげられる強さを持ちたい。
『銀花の蔵』(新潮社) 遠田 潤子 より
『銀花の蔵』の感想
うーん、重たい内容といいますか、色々と考えさせられて読後はドッと疲れました。
出てくるメインの登場人物全員が誰にも言えないような秘密や辛い過去があったり、心に闇を抱えていたり、一癖も二癖もある人たちばかり。
そして銀花の家族に次々と襲い掛かる不幸の連続。
「これでもか」というぐらい、どんどん辛い出来事が起こるので、「もうやめてあげて~」と思わず願ってしまいました。
そしてこの作品は「血のつながり」「家族」がテーマとなっています。
血の繋がりだけが家族の証じゃない、歪なりにもまとまっているのが家族なのかと思いました。
料理は上手だけど、盗難癖があって自分の望んでいる世界しか見ず殻に閉じこもる母親に、銀花と同様に私もイライラしました。
そして銀花は母親を「可哀想」な人だと思うようになります。つい下に見てしまう気持ちがは私も分かります。
だけど、母親の過去を知って愕然。今まで知らなかった母親の知らない側面を見た銀花は涙します。
そしてこれが印象的な言葉で紹介した文章に繋がっていきます。(「かわいそう」が何故強さに繋がるのかというところは是非読んでみて欲しいです)
皆、色んな過去を背負って生きていて、そんな中で自分がどうやって生きていくのか、どう生かされるのかは、環境や出会う人々、その一つ一つが自分というものを作りあげていくんだなと思いました。
とにかく銀花の心の強さが素晴らしかったです。
どんなことがあっても笑顔で前向きに生きようとする銀花に心打たれました。
前半は辛い出来事ばかりが起こり読むのが辛くなるようなときもありますが、後半に進むにつれて温かい話となっていき、最後は優しい余韻を残した作品でした。
終わりに
最後まで一気に読ませる力がある作品で、流石、直木賞候補の作品だなという印象を受けました。
読んで良かったです。
ただ、こういった内容の本は感想を書くのがとても難しい・・・。
もっと文章力や語彙力をを上げたいなと思う今日この頃。
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