今回読んだのは、横山秀夫さんの『ノースライト』。
映画化にもなった『64』以来、約8年ぶりの長編ミステリー小説です。
☑2020年本屋大賞ノミネート作品
『ノースライト』のあらすじ
「あなたの住みたい家を建てて下さい」と奇妙な依頼を受け、建築士の青瀬は、信濃追分に木造の家「Y邸」を完成させた。
あれから数か月、依頼主と家族が「Y邸」に越してきた様子はなく、家の中にあるのはただ一脚の椅子だけ。連絡の取れない一家はどこへ消えてしまったのか。
一方で、所長の岡嶋が事務所の命運をかけた建設のコンペの参加資格を勝ち取るが、贈賄疑惑が持ち上がり事務所の将来に暗雲が立ち込める。
『ノースライト』の印象的な言葉
差し込むでもなく、降り注ぐでもなく、どこか遠慮がちに部屋を包み込む柔らかな北からの光。
東の窓の聡明さとも南の陽気さとも趣の異なる、悟りを開いたかのように物静かなノースライト。
『ノースライト』(新潮社) 横山 秀夫
『ノースライト』の感想
分厚い本だったのですが、とても面白く後半からは一気読みでした。
この物語は、信濃追分に建てたY邸から施主一家が忽然と姿を消し、その行方を追うミステリーを軸にして進行していきます。
家の中に唯一残っていた一脚の椅子。これは、昭和初期に日本にやってきたドイツ人建築家ブルーノ・タウトが設計したものだと分かり、タウトの軌跡を追うことで施主一家の思惑、そして行方が少しずつ掴めていくことになります。
そして同時に、事務所はかつてパリで活躍した画家の「藤宮春子メモワール」建設のコンペに向かって突き進み、建築家としての情熱が描かれています。
私にはミステリー小説というよりかは、どちらかというと家族小説に近いのではないかと感じました。
主人公の青瀬は、バブル崩壊により職を失い、さらに離婚をして酒に溺れていたところをかつての同期の岡嶋に救われることに。
そして、青瀬は別れた妻が望んでいた木造で、青瀬の幼少期に思い出のあったノースライトを基本にした「Y邸」を完成させます。
幼少期の父との思い出、想いがすれちがってしまった元妻、月一回の娘との会話、家庭崩壊の事情を抱える岡嶋、タウトと内縁の妻のエリカとの絆、それぞれの家族の形がこの物語にはあります。
特に、家庭崩壊してしまった岡嶋の息子への愛情がとても感動しました。
最終的には、主人公青瀬の「再生の物語」と言っても良いのではないでしょうか。
謎が回収されたとき、ホッと一息つくような心温まる物語でした。
終わりに
改めて我が家(マンション)を見てみると、北の窓ってないんですよね。
なので、ノースライトについては想像するしかありませんが、この本でも述べてあった通り、包み込むような優しい光なんだろうなと思います。
いつか家を建てるときにはノースライトのことも頭に入れておきたいです。
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