今回読んだのは、ソン・ウォンピョンさんの『アーモンド』。
☑2020年本屋大賞翻訳小説部門 第1位
ここ最近、映画『パラサイト』を始め、本では『82年生まれ、キム・ジヨン』と、韓国エンタメの勢いが凄いです。
そんな勢いの中で、韓国でベストセラーとなり、日本では本屋大賞翻訳小説部門1位に輝いた『アーモンド』について感想を書いていこうと思います。
『アーモンド』のあらすじ
失感情症という生れつき偏桃体が小さく、感情をあまり感じることが出来ない主人公のユンジェ。
母親から「普通」になる教育を受けるも、どうしても「普通」に出来ず周りから奇異の目で見られてしまう。
そんなユンジェは高校生になると一人の少年と出会う。名前はゴニ。
彼はユンジェとは正反対で感情をむき出しにする不良少年だった。
激しい感情を持つ少年との出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていくことになる。
『アーモンド』の印象的な言葉
ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。
感じる、共感すると言うけれど、僕が思うに、それは本物ではなかった。
僕はそんなふうに生きたくはなかった。
『アーモンド』(祥伝社) ソン・ウォンピョン より
『アーモンド』の感想
主人公ユンジェと不良少年のゴニは、それぞれの理由から「怪物」と呼ばれ、クラスからも社会からも浮いた存在だったけど、さまざまな出来事を経験することで成長していく物語です。
ユンジェ視点で淡々と物語が進んでいくのが、逆にに色々と考えさせられました。
この物語のキーワードは「共感」と「愛」であり、ユンジェを通して私たちに問いかけています。
共感することも大事だけど、共感できないものを理解することの大事さをこの本は教えてくれたように思います。
分からないからこそ分かろうと努力することで、愛情が出てくるのではないでしょうか。
例えば、私だったらゴニが同じクラスに居たら「悪い子」だと決めつけてしまい、近寄ろうとしないと思います。
だけど、ソンジェは感情を感じないからこそ、彼のことを理論的にゴニの心を理解しようとします。
そしてゴニとの向き合う時間の中で「愛」というものに気付いていきます。
訳者のあとがきには、
頻発する暴力やいじめ、虐待など、私たちの社会で起きているさまざまな問題の多くは、共感の欠如がその根底にあると言われる。本物の「共感」ができる力を取り戻すため、私たちは、著者が提示する「愛」についてあらためて深く考えてみる必要があるのではないか。
と書かれています。
幼い頃から小説を読んでいると、「共感力」が高くなると言われており、実際、私も共感力が高い・・・と思っていました。
だけどこの本を読んで、私には本物の「共感」があるのかと疑問に思い始めました。
訳者の言う通り、「愛」についてあらためて深く考えてみたいなと思います。
「感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れ」ないためにも。
韓国の社会問題に切り込んだ作品らしいですが、日本人の私が読んでも違和感がないのできっと日本の社会問題でもあるのでしょう。
この本が注目されるのも納得ですし、是非若い人に読んでほしいなと思いました。
とても読みやすく分厚くもないので、あまり本を読んだことのない人でもスラスラと読めるのではないでしょうか。
終わりに
いつもファンタジーばかり読んでいる私は、こういった現実の社会問題に関する本は苦手だったりします。
だけど、この本はそんな苦手意識をどこかに飛ばしてくれるくらい夢中で読みましたし、読んで本当に良かったなと思います。
著者は元々は映画の脚本や演出を手掛けている人みたいなので、もしかしたらこの作品も映画化されるかもしれませんね。
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