今回読んだのは、雪乃紗衣さんの『永遠の夏をあとに』。
夏の森の自然をとても美しく描いた作品でした。
『永遠の夏をあとに』のあらすじ
時は1999年7月。ノストラダムスの大予言の月。
小学生の拓人は幼い頃に神隠しに遭い、そのころの記憶を失っていた。
そんなある日、バイオリンを持った一人の少女が現れた。どうやら拓人は昔、少女であるサヤと会っていたことがあるらしい。
小学生最後の夏休みをサヤと過ごす拓人。
なぜ拓人はサヤを忘れているのか。あの時何が起こったのか。
夏と自然を美しく描いた、やるせないほど切ない夏の物語。
『永遠の夏をあとに』の印象的な言葉
この町は拓人を拒絶しても、山や風や光は違った。お構いなしに拓人をのみこむ。吹きなびく麦の畦道を自転車で行けば、風の波が拓人をさらう。光をのむと、遥かな時がとけている気がした。
『永遠の夏をあとに』(東京創元社) 雪乃 紗衣
『永遠の夏をあとに』の感想
雪乃さんは『彩雲国物語シリーズ』の著者です。
『レアリア』など他の著書はファンタジーやSFなんですが、この作品は日常だったのが新鮮でした。(霊関係の内容があるのでちょっとSFちっくではあるんですが・・・)
印象的な言葉でも紹介した通り、自然の描写がとても綺麗ですよね。
表紙も綺麗な色だし、爽やかな風を感じます。
ただ、中には結構えげつない暴力シーンがあり、自然の美しさと対比してより残酷さが際立っていたように思います。
友人の彰がとても良い味を出していましたね。小学6年生にして趣味はダーツという所に思わず笑ってしまいました。
私は、暴れん坊の数馬も好きでした。子供がどのように育つのかは結局は親次第なのかなーと思ったり。
この作品はバイオリンで曲を弾く描写が出てきますが、なんと『永遠の夏をあとに』仕様に演奏されているだけではなく、テーマ曲まであるんです!
ここには2曲載せておきます。他の曲も聴きたい場合は、「sources」さんのチャンネルから聴いてみてください。
モーツァルト「バイオリンソナタ第21番ホ短調 第二楽章」/ Vn: 日髙隼人・pf:野津永恒(sources)
「恋文」(『永遠の夏をあとに』テーマ曲) / sources
バイオリンの描写の時に、その時の曲を聞くとより物語に引き込まれました。
私はクラシックは分からないんですが、とても良いなーと思いました。
全体的にはとても良かったのですが、結末が私的には残念でした。
↓ 以下、ネタバレがあります
エピローグでは30歳を過ぎた拓人が母親のお墓参りをするのですが、隣にはサヤがいます。
ちょっと恋人っぽい雰囲気を醸し出していました。
うーーん、サヤには玲司だけを想っていてほしかったな。
初恋は初恋で終わるってことなのかな。
あと、皆がサヤのことを忘れていく中で拓人は覚えているだけでなく、なんと視えているんですよね。
拓人の執念がちょっと怖い・・・。
そこは、『千と千尋の神隠し』みたいに「サヤとの記憶はなくなったけど、バイオリンの音色がどこからか聞こえる」みたいな感じで切なく終わってほしかったな。
個人的には終章で物語が終わっていたらとても良かったなと思いました。
無理矢理少しでもハッピーエンドにした感じになっていたのが残念でした。
これはあくまでも私が解釈をした結果の感想です。
他の人が読むとまた違った解釈になるかもしれません。
終わりに
色々書きましたが全体的に好きな物語でした。
表紙買いをしても満足のいくの内容となっているのではないでしょうか。
短編集で良いので、鷹一郎視点の花蓮との出会いを書いてほしいなぁ、なんて思っています。
↓ ブログ村ランキング参加しています。面白かったらクリックをお願いします