今回読んだのは、恩田陸さんの『六番目の小夜子』。
過去に読んだことがあるのですが、再読本も含めて恩田陸さんの本を読み直したいなと思ったので、まずはこちらのデビュー作から。
あらすじ
ある高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。3年に1度に指名を受けた「サヨコ」と呼ばれた生徒は、とあることをしなければならない。しかも誰にも見つからずに・・・。そして今年は「六番目の小夜子」の年。4月、高校3年生になった雅子のクラスに、美しく謎めいた少女が転校してきた。その名は津村佐世子。実は死んでしまった「二番目の小夜子」と同じ名前だったのだ・・・。彼女の転校から卒業までの1年間の学園生活を描いた物語。
印象的な言葉
ただ、きれいな渦や愛らしいさざ波を見るだけでよいのだ。それだけで彼は満足する。自分が流れにほんの少し細工をしても、なおかつ淀みなく川は流れ、やがては全てもとに戻っていくという事実だけで。
『六番目の小夜子』(新潮社) 恩田 陸 より
感想
小学生の時に初めてこの本を手に取ったのですが、その時はただただ怖かったということを鮮明に覚えています。この年になり改めて読み直しましたが、そんなに怖くなかったですね。成長したということなんでしょうか。
そうはいっても怖いシーンはありまして、圧巻だったのは文化祭の演劇のシーンです。「」がひたすら続き、また強調したいときは太字になるのでそれがより一層読者を恐怖へと導いていた気がします。
だからこそ、恋愛のシーンではホッとして和みますね。高校生の恋愛って可愛いなと。
そして、改めて読むとこの作品ってよく分かっていないことが多いんですよね。
備忘録もかねて整理をしながら、自分なりに考察していこうと思います。
「サヨコ」とは
「サヨコ」伝説
・三年ごとに「サヨコ」になる者が出る
・文化祭で「小夜子」という女の子の出てくる芝居をやった年は大学合格率が非常に高い
・鍵が存在し、「渡すだけのサヨコ」もいる
「サヨコ」が行うこと
・「サヨコ」になることを承知したという証拠に、四月の始業式の朝、自分の教室に赤い花を活ける
・9月の始業式の日に赤い花を活ける(サヨコの芝居の準備をして、過去のサヨコを凌ぐものを用意できる場合)
・オリジナルの台本を学園祭の実行委員長の家に郵送する
・卒業式当日に次の「サヨコ」に鍵を手渡す
6人の「サヨコ」
・「一番目のサヨコ」:「サヨコ」伝説の始まり。『小夜子』という一人芝居の台本を作成。その年の大学合格率が非常に良かった。
・「二番目のサヨコ」:転入生。『小夜子』の役をやる予定だったが、乗っていた車がトラックに衝突して死亡。名前は津村沙世子。その年の大学合格率は史上最低を記録。
・「三番目のサヨコ」:秋の兄。全てをこなす。大学合格率は史上1、2を争うほど良かった。
・「四番目のサヨコ」:気の強い女の子。いきなり正体を明かし「なぜこんな変なことをしないといけないのか」と生徒総会に抗議。受験時に原因不明の高熱を出して浪人、翌年も高熱を出してノイローゼになる。
・「五番目のサヨコ」:「無言のサヨコ」。赤い花を活けたがその後は何もしなかった。
・「六番目のサヨコ」:加藤彰彦。佐世子と遭遇し、強い恐怖心から持病の喘息を起こし入院。鍵を秋に託す。
解決していないこと
佐世子とは一体何者だったのか
秋は「佐世子は「サヨコ」をやめさせるために来た」んだと最後に理解したようだが、にしては彼女の行動がちぐはぐに思える。また、彼女は動物を操れる能力を持っている風だったが、最後の火事のシーンでは犬を上手く追い払えなかった。どこかでただの女の子に戻った・・・?
黒川先生の正体
終始謎の人物だった担任の黒川先生。上手く「サヨコ」がいくように見守っていたり、時には手を差し出していた。何の為にそんなことをしているのかも不明。先生として大学進学率を上げるため?
あと、完全に推測だが、彼は「一番目のサヨコ」だったのでは?
火事で燃えてしまった「学園祭実行委員会実施要綱」を新たに作成してくるあたり、「サヨコ」伝説は終わらないのだと暗に仄めかしている・・・?
終わりに
読んだことのない人がこの記事を読むと、「サヨコ」だらけで訳が分からないですよね。私自身も書きながら頭が混乱しました(オイ)。
秋のお姉さんは「渡すだけのサヨコ」だったみたいで、その時の場面が『図書室の海』に収録されています。ただ、『図書室の海』は他の作品のリンクもあるので、その作品全てを読み終わったら『図書室の海』を読もうと思います。
しかしこんな凄い作品がデビュー作だとは…。
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