今回読んだのは、松葉屋なつみさんの『星砕きの娘』。
☑第四回創元ファンタジイ新人賞受賞作
(応募時は『沙石の河原に鬼の舞う』。刊行時に『星砕きの娘』に改題)
あらすじ
鬼が支配する地、敷島国。都で母と共に鬼にさらわれて以来、その地に囚われている少年鉉太。
ある日、鉉太は川で蓮の蕾を拾うが、気付くと蕾が赤子に変化していた。その後赤子は蓮華と名付けられ、美しく強い女性へと成長するが連華にはある不思議な力があった。
攫われてから7年後、都から鬼の砦に討伐軍が派遣される。2人はその日を境に、鬼の正体、そして武家社会について深く関わっていくことになる。そして、不思議な力を持つ蓮華の正体とは。
人々の苦悩と救済を描いた和風ファンタジー小説。
印象的な言葉
「縁起とは因縁と結果を結ぶもの。因果の生起するところ。(中略)欠けているのは縁起です。あなたがたの因果の縁は、これから生じる縁起が結んだものなのです」
『星砕きの娘』(東京創元社) 松葉屋 なつみ より
感想
京や帝という言葉から最初は平安時代かなと思いましたが、読み進めていくと仏や武家社会などが出てきたので室町時代をイメージした作品なのではないでしょうか。
最初は鬼退治の話かなと思いきや、中盤から人間同士の欲望や恨みが交じり合い、善と悪がハッキリ分かれるような単純な物語ではなくなっていました。
人の恐ろしい怨念が魔を呼び、魔が鬼を産む世界。殺戮が連鎖する中で、鉉太と蓮華の父子の絆というものがとても温かく感じました。また、途中で登場する鉉太の婚約者の泉水も素敵な女性でした。私は芯が強い女性が大好きです。
この物語で難しかったのは仏教に関するお話です。むしろこの考え方?が物語の根幹であると思われますが、仏教や説話に関して全然知識がなく、特に明王が出てきた辺りから私の理解力が低下していっていることに気付きながらも、なんとか最後まで読み終えました。
蓮華の正体にはスッキリしました。彼女にはこれからも幸せでいてほしいです。
終わりに
2020年1月28日に開催された第5回創元ファンタジイ新人賞では、残念ながら受賞作はありませんでした。過去にも受賞作がない年がある中で、本作は受賞しているということで、レベルの高い作品だということが分かります。
今後もこの作家さんの作品を楽しみにしたいと思います。
ちなみに、第一回の優秀賞だった『魔道の系譜』は王道西洋ファンタジーで、めちゃくちゃ面白かったです。3巻で最終巻となりましたが一冊一冊が分厚くて読み応え十分です。魔法と剣のファンタジー小説が好きな方には心からお勧めします。
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