今回読んだのは、L・M・ビジョルドの『チャリオンの影 下』。
あらすじ
騎士団長ドントの死により、主人公カザリルは王家に引き継がれている呪詛が見えるようになる。呪詛を断ち切るためには国外への婚姻が必要だと考えたカザリルは、国姫イセーレをイブラ国に嫁がせようとする。しかし、立ちふさがるのはチャリオン国を実質支配している宰相マルトゥだった。カザリルは呪詛を破り、チャリオン国とイセーレを救うことが出来るのか。
印象的な言葉
祈りとは、片足をもう一方の足の前に出すことだ。なおも進みつづけることだ
『チャリオンの影 下』(創元推理文庫) L・M・ビジョルド より
世界観(あとがきより抜粋)
国のモデル
中世スペイン
イブラ半島
五神教国:チャリオン(主人公のいる国)・イブラ・ブラジャル
四神教国(ロクナル人):ジョコナ・ボラスネン・ヴァルド・タヴァキ・ジャルン
不明:イース・ダルサカ
五神教国と四神教国は覇権をかけて戦いを繰り返しているが、現在は五神教国のほうがやや優勢。
過去には四神教国が半島全域を席巻した時代もあった。
五神
この世界では人々の生活と宗教が密接に結びついており、五神を信仰している。
姫神:季節は春。色は青と白。未婚の少女を守護。学びと様々な始まりを司る。
母神:季節は夏。色は緑。親となったすべての女性を守護。健康と医療を司る。
御子神:季節は秋。色は赤とオレンジ。狩りと戦いと収穫を司る。
父神:季節は冬。色は灰色と黒。親となったすべての男性を守護。正義と安らかな死を司る。
庶子神:色は白。すべての魔を支配し、四神教では邪悪な魔と見なされる。均衡の神。孤児や私生児、死刑執行人、同性愛者などを守護。季節に関わらないあらゆる災厄を司る。
感想
ファンタジー(特に西洋)を読むときには、いかに早くその物語の世界観を掴むことが重要になってきます。大体の本には巻頭にその物語の世界観の説明が記載されているので、読みながら分からないところはそのページに戻ると良いと思います。私も登場人物のページに戻りながら読んでいました。
ただ、この『チャリオンの影』においては宗教の信仰がメインで、人物や国も多くないので、五神の存在さえ押さえておけば非常に読みやすいと思います。(本によっては人物が多すぎたり、国の都市の場所を知っておかないと読みづらいものもあります)
この物語は冒険ものではなく、国の陰謀と策略のお話です。他の国が出てきたもののスケールとしてはそこまで大きくはありませんでしたが、要所要所で大きな展開となっていたのが、読者を飽きさせることがなくてとても面白かったです。
登場人物でいうと、兄弟が全員死んでしまって、若くしていきなり国主となったイセーレの成長が目覚ましくてカッコよかったです。
登場した時にはお転婆で自分の感情のままに動いていた女の子が、自分を政略結婚の駒と見る冷静さと視野の広さを持っていて、これからのチャリオンは彼女に任せても大丈夫だなとさえ思わせてくれる風格になっていました。
主人公のカザリルも、体はボロボロでしたが流石の冷静さで、ちゃんと見せ場があって良かったです。最後まで好きな人との年の差を気にして自分を卑下しているところも、可愛らしさがあって魅力的でした。
最後に
イブラ半島をめぐる物語はまだまだ続きます。
次は、本書の3年後のイセーレの母親のイスタを主人公とした物語らしいです。イスタといえば、本書では呪いにかかって悲嘆に暮れているか弱き人という印象ですが、どういった活躍をしてくれるのでしょうか。
しかも、ヒューゴー、ネブラ、ローカスの三賞を総なめにした作品ということらしいので、ますます読むのが楽しみです。
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