今回読んだのは、恩田陸さんの『終りなき夜に生れつく』。
あらすじ
『夜の底は柔らかな幻』の前日譚を描いたスピンオフ短編集。
登場するのは本編の主人公の友人の藤みつき、バーの店主だった軍勇司、入国管理官の葛城晃、そして本編でも謎の存在だった神山倖秀の4人。
しっかりして強かった彼らも最初から完璧な人間だったわけではない。
彼らが誰と出会いどう変化し自己が確立されていったのかが分かるストーリー。
印象的な文章
俺たちは、大丈夫なのか———。あの夜を経て———あの夜を生き残って———今の俺たちは、大丈夫なのか?
俺たちは、あの夜から逃れられるのか?
『終りなき夜に生れつく』(文藝春秋)恩田陸 より
「終りなき夜に生れつく」
ぽつんと呟く声にハッとする。
「あなたがあの日、図書館で僕に話しかけた時に気付いた。ああ、これは僕だ、と。そして、あなたでもある。僕たちは、同じ種族だ。永遠に終わらない夜を生きていく種族。そこでしか生きられない種族」『終りなき夜に生れつく』(文藝春秋)恩田陸 より
感想
本編とあまり時間を置かずに読んだので、世界観にとまどうことなくすんなりと物語の世界に入っていくことができました。
今回の主人公の4人は本編でも魅力的な人物たちだったので、彼らにスポットが当たったのはとても嬉しいです。
ただ、残念なのは本編の主人公と葛城の出会いの話(葛城視点)がなかったこと。
「自分でも今まで感じたことのない感情…」みたいな、とまどっている葛城さんが見たかったです。彼は愛情が分からず憎しみの感情だと思い込んでしまう不器用すぎる男なのです(本編では主人公を本気で殺しに行きます)。
神山さんはやっぱり最後まで不気味な存在でした。
終わりに
この本では「在色者」や「イロ」についての説明がないので、初見だととまどってしまうかもしれません。まずは本編を読むことをオススメします。
とても世界観が好きな物語でした。
また彼らの物語が描かれることを心から希望します。
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